初夏の尾瀬を歩く
         2003年7月
           その3


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尾瀬紀行
(尾瀬を最初に紹介した武田久吉氏の尾瀬紀行)




<ブナの国日本>

 尾瀬は現在懸命に森を育てる努力をしている。
 ボランティアの手で継続的にブナの植林が行われている。
蔦が這う もともと瑞浪の国・日本はブナの国である。けっして杉の国、花粉症の国ではない。昔からあった広葉樹の森を乱伐してしまい、あわてて植林したのが杉であり、その理由は単純に成長が早いからというもの。わたしは、以前よりずっとそうだが、山歩きの中で針葉樹の森にあまり親しみを感じない。逆にブナや楢や楓など広葉樹に安堵感を覚える。昔から日本人を育てたベースがそういった広葉樹の森であり、遺伝子の中に穏やかに感応するセンサーが組み込まれているのではないかとも思ってしまう。

 世界遺産に認定された白神山地を引合いに出すまでもなく、長い年月が育てたブナの森は豊かな滋養を蓄え自然の生態系を守り、あるいは自然災害から人間を守っている。
 実はブナが生育する地中(根のまわり)にはミミズや、トビムシや線虫などの微生物が無数に住んでいて、落ち葉を土に戻す作業を毎日繰り返している。その腐葉土がブナに十分な養分を与え、立派な幹を造り、葉を繁らせ、根を張らせることになる。歩くときフカフカと足が沈むほど柔らかなブナの森は、多少の大雨はすべて吸収してしまうし、強い根を持っているので簡単にはくずれない。
 まさにブナは森の守り神であり、日本人の守り神でもある。

 このところ毎年、世界の異常気象がニュースに登場し続けている。寒波、熱波、多雨、竜巻などの犯人は地球温暖化であるものが多い。ブナの森は温暖化を防ぐ効果がある。小さな努力の積み重ねが世界を救う。わたしも植林のお手伝いをしなければと実感した。




<<エピローグ>>


 梅雨の合間を縫っての山歩きであり、多少の雨を覚悟したが全行程を通して一度も雨具を使うことはなかった。おかげでこの季節の特徴的な尾瀬を堪能できた。これを天恵といわずなんと言えようか。わたしたちに幸運の女神が微笑んでくれた。

 最後に神戸からご夫婦でいらっしゃった件(くだん)の鉄砲水の男性の話を。
 「神戸から10時間かけてきましたが、何度来てもすばらしい。今回で9度目ですわ。この季節になると尾瀬に行きたいと疼くのです。こんなに遠いのに我ながらよくきますわー。」

 日常が忙しければ忙しいほど尾瀬の魅力に惹きたてられてしまうようである。



 もう一度、武田久吉氏の文を引用。

「尾瀬平の湿原は本州第一の広さを有し、これを貫流する数条の蛇行する流水は美しい樹林に縁どられ、更にこの大湿原に宿る大小幾百かの池塘或いは深く或いは浅く、これを山上から俯瞰する時は緑絨上に散在する宝玉かとさえ怪しまれる程に美しい。」


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